減感作療法
減感作療法はアレルギーの根治療法です。気管支喘息、アトピー性皮膚炎、花粉症、蜂アレルギーなどの治療に用いられます。
1.減感作療法の実施方法
| @ |
注射による方法
アレルギーの原因となっている抗原(アレルゲン)のエキスを繰り返し皮下注射して行います。代表的な抗原はスギやハウスダスト、ネコ、イヌ、蜂などです。
治療開始時には、原液を一億分の一から一千万分の一に薄めたものを用い、0.05ccから開始して毎回量を増やしながら注射を続けます。注射液の量が0.5ccまで増えたら、その次からは液の濃度を10倍にして、注射量を0.05ccに戻し、再び増量していきます。このように増量しながら、次第に注射する抗原量を増やしていきます。
注射の間隔は、標準的な進め方では週2回ですが、久徳クリニックでは生活療法も併用するという前提で週1回から始めています。
大切なのは、間隔が開き過ぎないように配慮しながら注射を繰り返し、治療効果が現れる濃度まで抗原量を増やしていくことなのです。ですから、治療を急ぐ場合には週2回が好ましく、場合によっては毎日注射することもできます。
さらに急ぐ場合は、急速減感作療法といって毎日4〜5回の注射を1週間ほど続ける方法もあります。この場合はショックに備え、入院して点滴をしながら行います(特に蜂アレルギーの場合)。
30〜40回ほど注射を繰り返して、注射液の濃度が十分に濃くなったら「維持量」としてそれ以降は量を増やさずに、2週間から1ヶ月に1回の間隔で少なくとも2〜3年は続けます。
抗原の種類によっては健康保険が使えず自費になる場合があります。
たとえば蜂アレルギーでは輸入する蜂毒のエキスも専用に購入して頂かなくてはなりませんし、維持量に達するまでに40回ほどの注射が必要になります。保険が使えませんから維持量に達するまでに(蜂1種類あたり)約8万円弱の費用が必要になります。維持量に達してからも毎年1〜2万円ほどの費用がかかります。
|
| A |
経口的減感作療法
主にアトピー性皮膚炎の食物アレルギーの治療に用いる方法です。
卵白・牛乳・小麦などアレルギーの原因となっている食物(抗原)を、注射ではなく少しずつ食べていくことにより抵抗力をつけていく治療法です。
負荷試験を行い原因アレルゲンを確定してから、アレルギーの種類と強さ、患者さん一人一人の年齢、生活習慣などを参考にして治療計画を立てて行います。
注射による減感作療法よりも治療効果に個人差があります。その理由はアトピー性皮膚炎の食物アレルギーには不安や暗示などの心理的影響のかかわりが大きいからです。心理的影響への対策が十分に行われているか否かで治療効果に差が出るため、治療開始前に心理的影響への対策について十分な分析と指導を受けておくことが必要になります。必要であれば入院して行うこともあります。
経口的減感作療法はスギ花粉症にも試験的に行われていますが、現時点ではまだ花粉症に対する有効性は確認されていません。 |
2.減感作療法の効果
| @ |
スギ花粉症では、70〜80%の有効性が認められています。
2〜3年の減感作療法実施後には、花粉の大量飛散年であっても、60%までの人は無症状、22%の人は軽症に経過します。シーズン中に1週間以上生活に支障が出た人は16.5%でした。 |
| A |
小児期のスギ花粉症に減感作療法を2年以上実施した場合、成人後も76%の人に症状の消失・改善が認められます。1年未満の実施期間では成人後の改善率は16%、薬物療法だけの場合は20%でした。 |
| B |
ダニによるアレルギー性鼻炎では、減感作療法終了後5年を経過しても、約70%までの人は病院にも行かず薬も必要がないというデータが出ています。 |
| C |
喘息では実施1年後で、著明改善22.2%、改善48.1%、軽度改善14.8%という効果が認められています。喘息の場合はアレルギー以外の原因(ストレスや自律神経の乱れなど)のかかわり方により、総合的な治療効果には個人差があります。 |
| D |
ダニが原因のアレルギー性鼻炎があり、さらに「スギ花粉のアレルギーもあるがまだ花粉症を発症していない人」で比較した場合、スギの減感作療法を行わないと3年以内に50.9%の人がスギ花粉症を発症します。減感作療法を実施した場合には12.9%まで発症率が低下します。 |
| E |
小児のアレルギー性鼻炎に減感作療法を実施することにより、喘息への移行が予防できます。
アレルギー性鼻炎に3年間の減感作療法を実施したグループでは、その後の喘息の発症率が24.1%であるのに対し、実施しなかったグループでは喘息の発症率は44.4%でした。 |
| F |
ダニアレルギー陽性の人に減感作療法を実施すると、花粉など他の種類のアレルギーを持つことが予防されます。 |
| G |
アトピー性皮膚炎の卵白アレルギーでは、経口的減感作療法により約80%までの例で摂取可能になります。 |
| H |
蜂アレルギーでは、まず標準的な週に1〜2回の減感作療法か急速減感作療法を行い、注射液の濃度を維持量まで高めます。その後は月1回の維持療法を続けます。維持療法開始後は、再び蜂に刺されても95%まではアナフィラキシーショックを完全に予防することができます。維持療法の期間は5年以上が好ましいとされています。 |
3.副作用
副作用は注射部位にのみ現れる局所反応と、全身性の症状が現れる全身反応があります。経口的減感作療法では全身反応が主になります。
局所反応の代表的なものは、接種部の発赤と腫れや痒みです。治療開始時から現れることはまれで、ある程度濃度が濃くなってから現れてきます。
局所反応は治療効果の現れともいえますから、発赤や腫れが3p程度で3日以内に治まるのなら心配はいりません。この程度の反応は「程よい効き加減のしるし」ともいえます。
局所反応が5p以上になったら全身反応が現れる可能性がでてきますから注意が必要です。
全身反応としては、蕁麻疹、鼻炎の悪化、喘息発作の誘発などが起こりえます。
もっとも重症なものは呼吸困難などを伴うアナフィラキシーショックですが、適切に減感作療法が行われている場合にはほとんど心配はありません。
注射による減感作療法を専門の医師が行った場合には、喘息発作の誘発は千〜二千回の注射に1回、アナフィラキシーショックの出現は二百万回に1回程度といわれています。
「減感作療法の効果」の文章作成にあたっては、以下の先生方のデータも参考にしています。
奥田実・馬場廣太郎:日本医師会雑誌119巻第4号1988、
岡本美孝:メディカル朝日2006年1月号、
福田博国他:日本医事新報3907号1999