「母原病」が子どもの病気の60パーセント
久徳 小児科医の立場からいうと昭和30年から35年ごろにかけて、小児麻痺とか日本脳炎という昔の子どもの病気というのが非常に少なくなりました。それで将来の日本の子どもは健全に育つぞと思ったんですが、代わりに小児の心身症とか親子関係の歪みというような、それまでにはなかったような現象が出てきました。
私の専門の喘息を例にとっても、子どもに投薬しても、生活スタイルを改善するように指導しても病気が快方に向かわないことが多くなり始めました。そういう患者を何人も診ていくうちに、これは身体的な原因だけでなく、心の問題が絡んだ病気ではないかと気づくようになりました。しかも多くの場合、付き添いとして一緒に来る家族、とくにお母さんとの関係が強いのではないかと考えつくようになったのです。
小田 原因は母親、つまり「母原病」である、と。
久徳 はい。喘息児の付き添いで来るお母さんには、大まかに分けて二つのタイプがあることに気がつきました。一つは過保護型の母親で、少し寒いからといっては厚着をさせ、子どもが少し鼻水を出しているからといっては入浴をやめさせるといったタイプです。もう一つはガミガミ型の母親で、ちょっとした子どものいたずらでも激しく叱りつけ、おとなしくせよ、静かにせよといって子どもを萎縮させてしまうタイプです。
生まれてからずっとこうした母親や家族と接していると、子どもは性格ばかりでなく、体質までも決定されてしまうのでしょう。
小田 お母さんを変えないと子どもが治らない。
久徳 そうです。つまり、子どもの病気の原因が子ども白身ではなく、お母さんの意識なり考え方なり、子どもとの接し方にあるのですから。
これまでの私の臨床経験からいって、現代の子どもの異常の60パーセントはその母親の育児が原因となった病気や異常、つまり母原病で、伝染病などが原因のものは40パーセントにすぎません。
小田 子どもが病気になったときには、お母さんは養育環境、とくに親が原因ではないかと疑ってみる必要がありますね。
久徳 ええ、母原病かどうか、11項目のチェック事項を考えました。
@子どもはあまり好きではない。それほどかわいいとは思わない。
A子どもは少ない方がよい。子どもがいることがそんなに幸せとは感じない。
B育児について不安が多い。
C育児に手がかからないようにしたい。だから、おとなしい子がよい。便利な育児がいいと思っている。
D育児より外で働く方が楽しい。
Eしょっちゅうガミガミいい、カッとなって叱ることが多い。
F子どもを褒めたり、おだてたりすることがあまりない。
G「子どものことだから、まあいいじゃないか」とつい過保護、溺愛にしがちである。
Hゼロ歳から3歳児のころ、子どもを親から離して他人に預けてもあまり気にならない。
I子どもを生き生き楽しい気持ちにしてやることが少ない。
Jたくましい子に育つとは思えない。
思い当たることが多いほど、子どもは母原病になりやすいといえます。


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