身体医学と心身医学
20世紀には医学が著しく進歩しました。結核や天然痘などの感染症は激減し、臓器移植までもが可能になり、人類の平均寿命も大幅にのびています。
このように感染症とか体の部品である臓器を治す医学を「身体医学」といいます。「体の病気を薬や手術などの医療技術で治療する医学」であり、全ての医学の基礎になります。その意味では「第一の医学」ということができます。
ヒポクラテスの時代から主にこの医学が人類の健康を守ってきました。そのためか現在でもこの身体医学だけが医学であると考えている医師や患者さんも少なくはありません。
しかし、人間の病気の原因は細菌や臓器だけにあるのではありません。心が原因で体の症状が現れる病気(心身症)があることも知られています。
心身症を治療するためには心と体の両面からの診療が必要になります。この医学を「心身医学」といいます。「人間関係の軋轢を調整し、心身のたくましさ不足をカウンセリングと生活指導で治療する医学」であり「第二の医学」といえます。治療は「心療内科」で行われます。
「第三の医学」としての人間形成医学
昭和35年ごろ、久徳クリニック前院長の久徳重盛は、気管支喘息を根本的に治しきるためには、喘息の原因であるアトピー体質や気道の過敏性などの「心身の不安定さ」が作られる原因を突きとめることが必要であることに気づきました。
そして「人間の性格や体質はどのようにして作られるのか」という研究を進め、昭和40年代中頃に「人間形成医学」という考え方を提唱しました。
この医学は、人間の生活環境(社会・地域・家庭・親子)と心身の成長との間の相互関係を研究し、生活環境が子供の人間形成(性格形成と体質形成)にどのように影響するのかを研究する医学といえます。
もともとは喘息の根治を目標として研究が始められたのですが、研究を進めていくうちに、この医学は「人間の心身のたくましさ」がどのようにして作られるのかということを知るためにも極めて役に立つことがわかってきました。
人間の「たくましさ」が作られていく過程(人間形成)と、その「たくましさ」が健全に成熟しない場合には心理面および身体面にどのような異常が発生するのか(人間形成障害)、という問題について知ることができるようになったのです。
この医学の立場に立てば、喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、言葉遅れ、夜尿症、不登校、青年期のうつ、引きこもり、拒食症、パニック障害、適応障害、社会不安障害、境界性性格障害などの「現代病・文明病」ともいわれる病気や異常は、いずれも「大人としての成熟に必要なたくましさの不足」が原因といえることがわかりました。
そして、そのたくましさ不足の複雑で微妙な「質と程度の差」により、病気の現われ方が決まってくるということや、たくましさ不足の「質と程度の差」は生まれた後の生活環境(社会・地域・家庭・親子)の在り方に影響されていることもわかりました。
人間形成の仕組を明らかにすることにより、「現代病・文明病」といわれる疾患の「完全な予防法」を考え出すことも可能になりました。そしてそれを応用することによりこれらの疾患の根治を目指すことも不可能ではなくなったのです。
久徳クリニックではこの「人間形成医学」を、身体医学・心身医学をさらに発展させた「第三の医学」と考えています。そして専門外来ではこの人間形成医学に基づいた診療を行っています。
更に詳しくお知りになりたい方は下記の書籍をご覧下さい。
【一般向け啓蒙書でおすすめのもの】
久徳重盛「病める現代と育児崩壊」中央法規,1984.
久徳重盛「思春期の心がこわれる瞬間」大和出版,1997.
【学術的専門書】
久徳重盛,吉田宏岳,安藤順一郎編「家庭管理」保育叢書26,福村出版,1981.
久徳重盛編「精神衛生」保育叢書23,福村出版,1982.
並木正義編「現代社会にあえぐ子供たち」カレントテラピー,1985.
並木正義編「生涯各期の心身症とその周辺疾患」診断と治療社,1985.
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